「暇をもてあます死骸」

という名の仕立て屋を探して
王の家来は街へ出た。


「死骸…死骸…」


躍動感にあふれた死骸。
にこやかにくつろぐ死骸。
居たたまれなさそうな死骸。
街には死骸があふれているのに
どういうわけか
暇をもてあます死骸だけが
見つからないのであった。


そもそも彼が探していたのは
ほんとうに本当の
死骸だったのだろうか?


「…あっ、違うよね!」


そう気付いた時には
彼もまたすでに
死骸となっており、
死骸になったら
することが
なかった。



「ああ、暇だ。
 そして死骸だ。
 これっぽっちも比喩でなく
 わたしはすっかり死骸で暇だ」


しかし
瓦礫の上に転がるその姿は
はたから見ると
妙に忙しげであったという。

(直射日光)

(蝿)

(風鈴)