飛び続ける
旅客機の機内で
走り続ける
ひとりの男。


機首に向かって
走るとき、
彼は軽やかに
音速を越え、
尾翼に向かって
走るとき、
彼は時間を
さかのぼる。


手に持った銃は
右に左に
リズムを刻み、
一往復ごとに
着実に
音の壁を破りながら
男は一歳ずつ
若返ってゆく。



「38往復めぐらいから
 ハイハイで進みだしたので
 みんなで手をたたいて
 応援しました(談・客室乗務員)」


「お客様のなかに
 成人用おむつを
 お持ちの方が
 いらっしゃらないか
 伺いました(同上)」


「いらっしゃい
 ませんでした(同上)」



やっぱり晴れの日にのりたいひこうき。

ぜったい窓ぎわにすわりたいひこうき。



そういったようなことに思いを馳せて空腹を紛らわすという試みです(失敗)。


しょぼしょぼと雨のふりをして降る液体窒素によって凍りついた練馬から生命を
まもるため、穴のあいた潜水艦に乗っているような気持ちで扉という扉を厳重に
閉じきって奥の部屋に籠もったところで空腹が内側から我が身を囓りはじめ、た
ちまち筆者をモナカのごとき中空の人間に変えてしまうのでした。


買い物に、
ものすごく、
行きたくない
のです。


傘はある。
金は… あっ



ひとりでペキンダックを食いに行った同居人が手に何かをぶら下げて千鳥足で
帰ってくるのを待つというカーゴ・カルト式解決法はどうだろうか。

火曜サスペンス劇場のような姿勢で床に安らいでいるところを発見されるのだ
ろうか。
 
麦飯は
いい。
 
麦飯は
善だ
 
(発見された手記より)