いいかげんな憶測を
動力源とする汽車に
馬が道をたずねます。
 
「これはなんと
 馬が口をききおる」
 
「いえ私は
 道をきいて
 おりますのですが」
 
レールの上を走るばかりで
方向など知るはずもない汽車に
道を尋ねるとは、馬のやつめ、
よほど困っておるのだろう。
 
そう考えた汽車は
たくさんの憶測をまじえて
地平線の彼方の世界の有様を
馬に語ってきかせました。


「ひこうきは
 軽い」(5000m)


「5人に1人は
 注射ずみ」(13000m)


「山に登ると
 クーポンが当たる」
 (41000m)
 
「左から食べる」(2000m)


マクドの肉な、
 あれレミングの肉らしいで
 崖の下で網もって
 獲るらしいで
 ドナルドが」
 (20m)


「ビタミンを飲むと
 よい」(3000m)


「みんななかよく
 暮らしてる」(85000m)


得々と語られる憶測に
真剣な面持ち(長い)で
ひとしきり耳(長い)を
傾けたあと、馬はすっかり
満足した面持ち(長い)で
慇懃に汽車に礼をのべ、
線路と直角の方向に
走り去ってゆきました。


「はて、あの馬は一体
 どこへ行きたかったので
 あろうか」

 
怪訝に思ったその瞬間、
カラスの置き石に車輪をとられて
汽車もまた線路と直角の方向に
大きく飛び出すと
脱線列車に特有のジグザグなフォームで
園児100人を跳ね飛ばし、
跳ね飛ばされた園児は全員
翌年の春に小学校へ入学すると、
包丁を持って乱入した無職男性に
実演販売を見せてもらいました。
 
彼らが最初に憶えた料理用語は
「ささがき」であり、
包丁を持った小学一年生100人が
最初に乱入したのは
ビール工房で、
100本のステンレス包丁が
あるパターンにしたがって
巨大な樽に次々と突き刺されると
それを目撃した工房長の頭頂からは
数百万のオーダーで毛髪が抜け、
お空へ昇って星座になりました。
 

しかしどうやら
話が脇道へそれてしまったようです。