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(炬燵みかんまつりに参加)
- 布団をめくると足には毛が生えていて、これが炬燵ではなく、大型の四角い猫なのだとわかった。緑がかった黄色の皮をむくと中身には毛が生えていて、これが蜜柑でないことはわかったものの、なんの動物かまではわからない。ニャーと鳴いている。
- 地雷原。見渡すかぎりの地雷原。地雷の上にはかならず炬燵がある。炬燵の上にはかならず蜜柑がある。そういう形でマークされ、寒さに凍える我々を誘っている。猫がすたすたと歩いてゆき、炬燵のひとつにもぐりこむ。騙されるな! あれは猫だから無事なのだ。騙されるな。
- 「掘り炬燵あれば盛り炬燵あり」「ことわざですか?」「いえ、事実です」 盛り炬燵もすごいのになるとチョモランマのてっぺんに布団が干してあるみたいな外見になって、しかもこれがあたたかい。ああ、人間ってあたたかい。そんな幻覚を見つつ凍死することもあるので要注意だ。
- 最後のひとりが秘密を吐いた。係員が手早くバケツで受ける。こうして得られた約500リットルの秘密を木綿の布で漉すと、にごりのない、高品質の虚構がとれる。残ったかすは悪臭を放つ真っ赤な嘘だ。真実はいつでもあなたの心の中にあり、その居場所に心底嫌気がさしている。
- 最後のひとりの鼻緒が切れた。これでもうあなたを追うものはいない。懸命に逃げてきたはずなのに、思いがけぬ寂しさがあなたを襲い、鼻がつんとなる。鼻孔から侵入した寂しさは脳を操り、やがてあなたの足が止まる。裸足の足音が、ひたひたひたと人ならぬ速さで迫って来る。
- 最後のひとりが消息を絶った。メンバーをすべて失ったチームは規約だけの存在となり、憑依できる10人程度のグループを求めて居酒屋へ漂い入る。テーブルのひとつから突如上がる雄叫び。新しいチームの誕生だ。今夜のうちに彼らは樹海へ発つ。幻の黄金都市を見つけるために。
- 最後のひとりが名前を伏せた。灯火管制を思わせる匿名性の暗闇で、しかし電子の猟犬は迷わない。ほどなく、漆黒のなかに悲鳴が響きわたる。猟犬が電信柱に全速力で激突したのだ。見えてない。迷わない。あきらめない。現代人が失ってしまった美徳がそこにはあった。
- 「ネットで知り合った」というのである。ニャーニャーと鳴く箱を手に、戸口でふんばる小学生の息子。「かわいい女の子だと思ってたけど会ってみたらかわいい子猫だったんだけどかわいいから飼ってもいいでしょ? ねっ?」箱の中身をあらためるのも恐ろしい。この現代が恐ろしい。
- 「ネットで知り合った」というのである。終電がないので泊めてやってくれと連れてきたのは0と1の果てしない羅列で、「圧縮は…」「もう限界まで圧縮してるの」「うちにそんなに大きなストレージは…」「お父さんの例のコレクションをちょっと削除すれば空くじゃない」「なっ」
- 「おかしい。何かがひっかかる」 釣られてゆく魚のつぶやきは一様にそのような漠とした疑念で、水面のすこし下を漂い残るそれらが海流に乗って集まり、やがてひとつの島になる。陸の隆起のように見えるそれは実際には海面の陥没で、漁師たちは訝しみながら呑み込まれてゆく。
- 主人がオオアリクイに殺されて半年が経ちました。主人がオオアリ(オオイヌノフグリによく似たキク科の植物)によく似ていたために起こった悲劇でした。私は食物連鎖が悪いと思うのです。この負の連鎖をどこかで断ち切らねばなりません。そういった意味から以下のリンクは切れてい
- 「この本は存在しません」と主張する本を買った。目録で見つけ、オンデマンド印刷でまんまと物質化してやったのだ。開いた瞬間、本は消え失せた。最初のページに印刷された特殊な図形が脳に作用し、私の認識から本自身を抹消したのだろう。そう思うことにして、家に帰った。
(「売体まつり」に参加)